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名古屋ではないのだが、彼女のところから、車で30分程度のおちょぼ稲荷へ誘われた。
正式名称は『お千代保稲荷』。
月末近くはいつも仕事が忙しく、彼女の勤務先はぴりぴりした雰囲気になるらしい。
いつもは素知らぬ顔でやり過ごしていた彼女だったが、ついに揉め事に巻き込まれてしまったという。
もともとさっぱりした性格の彼女なのだが、土地柄の違いか、いつまでも引きずっているかのような周りの雰囲気と、
たまに聞こえてくる陰口の言い合いに耐え切れなくなり、珍しく泣きながら電話をかけてきた。
僕の次のお休みは、月末から月始めにかけての連休だった。
彼女を放っておけなくなった僕は、彼女に休みを告げ、予定が合えばそっちに行くと提案。
すると、それまでの元気のなさが嘘のように元気な声で、「おちょぼさんに行ってみたい。」と。
なんでも、この辺りで商売をしている人は、月末から月初めにかけて、商売繁盛のためにお千代保稲荷にお参りするらしいのだ。
ちょうど月が変わる前にその月のお礼に参り、日付けが変わってすぐ、その月の商売繁盛を願うという。
そのため、月末はお店も夜通し開き、すごく賑わっているので有名だとか。
その中には、名物の串カツがあり、それが彼女の目的だ。
ただ、彼女の子どもを連れて行くわけにも行かないので、なんとか友達にお願いするから、と。
当日、仲の良いママ友が二人を預かってくれ、翌日も一緒に幼稚園まで連れて行ってくれるという。
えっ?
じゃあ、夜通し二人っきりってこと?
僕はどこに泊まるの?
なんて、ほのかな期待と欲望を口にすることも出来ないまま、彼女の運転する車に初めて乗り込んだ。
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